「1Q84」

村上春樹さんの「1Q84」を読みました。


3年前にあれだけブームになったのがやっと理解できました。
分厚いのが3冊もある長編ですが、すっかり引き込まれて、
私としてはかなり早く読み終えました。


当初は1と2だけが発刊され、1年後に3が発刊されたようで、
1と2だけ読んだ人は、謎を残したまま物語が終わって、
すっきりせずに1年間過ごしたのではないでしょうか。


2人の主人公「天吾」と「青豆」の2つの物語が同時に進んでいき、
その話が「1Q84」の世界で絡み合っていく・・・。


どこにでもありそうな日常的な風景の中で、
非日常的な出来事が次々展開されていく・・・。


頭の中でどんどんイメージが膨らんでいくのがわかります。
しかも膨らむのが均等ではなく、いろんな方向にいろんな形で。


天吾の背の高さはどれくらいだろう、
青豆はどんな顔をしているのだろう、
ふかえりは芸能人に例えると誰だろう、
そんなミーハーな想像も多いのですが。。。


そこら辺にいそうなキャラクターや、マダムやタマル、牛河のような、
あまり身近にはいそうにないキャラクターが入り交じっていることで、
より想像力がかき立てられたのだと思います。


どっぷり"春樹ワールド"に浸からせてもらいました。


それにしても、春樹さんの物語そのものの想像力はさることながら、
文中の、特に比喩の表現はすごいです。


「その声は冷蔵庫に長いあいだ入れっ放しにしておいた
  金属製のものさしのようにどこまでも硬く冷ややかだった。」
「厳しい夜間の単独飛行を終えた飛行士のように、いかにも寡黙に滑り台を降りた。」
「長い貨物列車が鉄橋を渡り切ることができるくらいの時間」


金属製のさしをもっている人も少ないでしょうし、
ましてや、それを冷蔵庫の長い間いれた状態を
経験したことがある人なんているんでしょうか!?


語彙の乏しい人間には一生書けない表現です。


また、この本を読んでいる時に、ちょうどオウムの逃亡犯が
続けて捕まり、教祖の映像なども流れたりしたので、
物語中の人物と重なって見えて、憂鬱な気持ちになりました。


オウムを取材していた春樹さんが、この小説で伝えようとしたことは何だったのか、
逃亡犯逮捕のニュースを見ながらとても考えさせられました。


震災と原発事故後の春樹さんのスピーチには心を打たれました。
春樹さんの新しい作品がどんなものになるのか楽しみです。



(イシイ)




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